ボウル型は同じでもカットの高さが違うだけで香りや味が変わる?


リーデル・ヴィノムシリーズ全25種の中には、高さに違いは有るもののグラスボウルの形状が同じものがあります。
ただ高さを変えただけのグラスに味や香りの違いがあるのでしょうか?
ワインアドバイザーを目指して猛特訓中の「I」氏が、この難問に挑戦しました!

テイスティングは同じワインを飲んだ場合、ボウルの形は同じでボウルの底から口までの高さが違う3つのグラスで比較した際に、香りや味わいにどう違いが出てくるのかを探ります。

416/30シラー/シラーズグラス(高さ236mm)
主に南仏やオーストラリアで栽培されるSYRAH シラー(オーストラリアではSHIRAZシラーズと呼ばれる)で作られた赤ワイン用のグラス。

 

416/90ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ(高さ218mm)
イタリアはトスカーナ州の高級赤ワイン用のグラス。サンジョヴェーゼ・グロッソ(このワインの産地、フィレンツェ近郊のモンタルチーノ村では、このブドウは「ブルネッロ」と呼ばれています。サンジョヴェーゼの一種)というブドウから作られる。

 

416/0ボルドーグラス(高さ225mm)
カベルネ・ソーヴィニヨン、メルローを主体に作られた、赤ワイン用。

ワイン名:CABERNET SAUVIGNON VIN DE PAYS D'OC(カベルネ・ソーヴィニヨン ヴァン・ド・ペイ・ドック) 1998 SELECTION THIERRY DERE-FREDERIC DE LUZE \1000@ENOTECA

416/30

  濃い色のベリーのような果実の香り香が最も大きく感じられる。全ての香りが凝縮する。口に流れ込む水流が強く、舌を伝わって、口内の奥の方まで届く。
416/90
  30で感じられた果実の香りがやや消える。(口に入る時の)水流は弱い。酸味強くなるような感じがする。
30と90を二つ、ブラインド(目をつぶり、どっちがどっちか分からなくした場合 )で香りをかいだ場合、区別は付くが、そのどちらかと0,例えば、30と0を比べた場合は、ほとんど区別が付かない。
416/0
  香りの面で、ちょうど30と90、二つのグラスの中間的性格だと感じました。

ワイン名:CHATEAU SOUDARS (シャトー・スダール)1996 HAUT MEDOC CRU BOURGEOIS \2000@KINOKUNIYA
ピンクがかった濃いルビー〜赤紫。粘性高く、「ワインの脚」がしっかりと流れる。強い香り。杏のような少しつんとする甘さや革っぽさ?やや熟成香か?真っ黒いベリーのような果実香も強い。ほのかな樽香、コーヒー、ローストした香り。酸味は中位からやや強め。濃い果物の甘さを感じるような果実味をたっぷり感じ、香りで感じたよりもずっと若々しい。細かい、さらさらのタンニン。アルコールによるヴォリュームはあまり強くない。長い余韻が心地いい。非常に美味しい。

416/30

  こってりした香りになる。悪く言うと重ためで、ぺたっと、平坦な感じ。よく言うと濃く、深い香り。でもワインがグラスの中で酸素不足になってしまっている様。口に入ると、ググッと奥まで届く。酸があまり感じられず、反対に苦みがアップする。果実味が少なくなる。ワインが最初に上顎(口内の天井部分)に当たるためか、鉄っぽさがアップする。
416/90
  香りが薄く、軽めに感じられる。酸が目立つ香り=酸味が強そう。口に入ったとき、口の奥まで行かないで、すぐに舌の両側(酸味を感じやすい部分)に流れ落ちる。そのためか、酸が最初から最後まで、ずっと残り、酸味が強い印象になる。タンニン(渋み)もアップする。
416/0
  柔らかい香りだが、果実香はアップして、実に甘そうな香りになる。カラメルやスパイスも感じる。全体的に明るいイメージの香り。口に流れ込み、舌の中程まで行き、そこで両側へ落ち、全体的に広がる。酸が残らない、あまり目立たないで、すっきりする。お見事。
このワインに関しては明らかに416/0が優れている、と感じました。
リーデルがはっきり意図して製作したことだが、口の中に流れてくるその違いで、ここまで明確に、特に酸味が変化するのかということと、最初にワインが触れる部分で印象が変わる、ということが、大きな発見です。

ワイン名:SYRAH VIN DE PAYS D'OC (シラー ヴァン・ド・ペイ・ドック)2000 MARQUIS DE BOLLAND \600@CAVE DE RELAX
非常に濃い赤紫。スパイス、特に黒コショウの香り。甘い紫の果実の香りが強く、濃縮ブドウジュースや、濃い色のベリーをつぶしたようなの香り、生血の匂い。

416/30

  こもる。果実の色が濃く、密度が高い。
416/90
  穏やか。というか香りの成分に対して、空気の比率が高いようで、香りが薄まって感じられる。
416/0
  香りが全体的にくっきり、ハッキリする。鮮やかな色の果実。
30から0,90に行くに従って、明るくなるイメージ。

ワイン名:MERLOT (メルロー)1999 KWV(SOUTH AFRICA) \800@SUGANO
倒れそうなくらい強く、凝縮した香り。ブラックベリー、スパイス(黒コショウ、ナツメグ)。口に入ったときのアタック、刺激は、思ったよりも柔らかい。酸も柔らかい。果実味が凝縮している。アルコールによるヴォリュームもある。温度がやや高め、23から24度(カード型温度計)。タンニンは低い。

416/30

  果実香、スパイス香が凝縮。しかし、やたらめったら凝縮すりゃいいってもんじゃない。窒息しそうな程、濃い香り。甘い、とろけるような、果実や果汁を煮詰めすぎたような甘さ。だが、口にはいると上顎に直接当たるためか、酸と、特に甘さが抑えられる。ジューシィさはあるが、大人しい。
416/90
  スパイス香はアップするが、果実味はややダウン。何か細かい、奥にある香りに手が届きそうな、そんな繊細な部分を感じさせる能力があるのか。土臭さが感じられ、その向こうに果実の甘い香りがあり、確かにイタリア、トスカーナの赤ワインの様な印象になる。3本目までは、このグラス大丈夫かな、と心配だったが、ここにきて確かにブルネッロなら美味しく飲めそうな可能性が見えた。
416/0
  甘ーい香りで、果実を強く感じる。甘さを後ろから支える酸がだんだん見えてきて、余韻に消えていく。香りの印象、最初は薄いが、カラメル香や、適度な甘い香り(薄め)が段々見えてくる。
30から0,90に行くに従って、明るくなるイメージ。
 
まとめ。
僕のイメージで言うと、香りの明るさ(イメージされるベリーの色の濃さなど)や軽さ、という点で、416/90416/0416/30の順に明るい、軽い。その分、416/30は色々なものが凝縮して、416/0はその中間で、バランスが良い。
味わいについては、大きく変わったのが酸の感じ方。416/90は、かなり明確に酸が際立つ。
416/90の特徴は、(果実の)香りが明るく、非常に開放的になるということ。あまり強くない香りのワインだと、拡散してしまって、「香りがしない」とさえ感じてしまうかもしれない(ブルネッロの香りというのが、そんなにすごいからなのだろうか。是非今度、このグラスで試してみたい)。そして、口の中では酸味が主体になるということ。このグラスはワインの酸味を引き出す能力が高い、ということでしょう。
416/30は、果実の香りや、他の様々な香りが、非常に強くなり、凝縮する。味わいは、意外だが、甘さが抑えられ、全体的に丸く、大人しくなる。これもシラー用のグラスとうたっているのだから、もう少し「シラーの真骨頂」的なワインで、試してみたい。特に、今回はこのグラスにピタリと合うワインがなく、その力を存分に発揮させることが出来なかったので、シラーの特徴がよく出ているワインで是非、再挑戦したい。
416/0は非常に偉大なグラスだということを再認識した(今回使ったワインがボルドータイプに偏っていたせいかも知れないが)。ワインのバランスがとても良くなり、果実を想像させる甘さが強くなり、背後を支える酸もきれいに感じ取れる。タンニンも、416/90に比べて、まるく感じられる。昔、友人にこのグラスを「魔法のグラス」と紹介したことがあるが、その印象は強くなった。


今回のグラステイスティングをやって、いくつか。
サンプルのワインの数を増やすことと、試飲する人の数を増やすこと。
また、品種の特徴のハッキリ出たワインを使わないとだめだな、ということ。
特に416/30に関しては、今回はその潜在能力をつかみきれなかったので、別のワインで、もう一度是非試してみたい。
そこから、それぞれのグラスが、なぜそういう機能を持っているのか、どうしてそのワインに、その機能を持ったグラスが合うのか、もう少し考えてみたい(香りがある意味で拡散し、酸味が強くなる416/90は、ブルネッロというワインのどういう特性を引き出すのか、それを知るには、まず、ワインをもっと理解しなければいけないが)。