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オーディオメーカーのケンウッドで数々のヒット商品を企画した鈴木多賀雄(51)が独立して2年。
無駄を徹底して省くビジネスモデルをエンジンに、それぞれの分野の販売ランキングで上位に食い込む商品を次々生み出している。
「自分の製品が生活を変えたと言わせたい」。往年のヒットメーカーはいたずらっぽく笑う。
かつて無風状態だったエスプレッソマシン市場に異変が起きている。
震源地は鈴木が2002年5月に設立したデバイスタイルだ。
全国3,500の家電量販店の販売時点情報管理(POS)データを集計する「GfK Japan」(東京・中野)がまとめた3月の販売台数ランキングでは、イタリアのデロンギやスウェーデンのエレクトロラックスなど海外大手を押しのけて1位と3位にランクイン。
1位の「ブルーノパッソ HA-12」(2003年2月発売)は業務用並みの機能を備え、ステンレスを多用したインテリアに合わせやすいデザインが特徴。海外品より3〜6割安い。3位の「同TH010」(2002年12月発売)もエスプレッソ単機能では最安値圏の約1万円だ。

こうしたヒットの原動力はユニークなビジネスモデルにある。
特徴の1つが徹底した無駄の排除。
デバイスタイルは商品の機能や価格、デザイン、販売戦略の決定と、量販店との商談に特化。あとはすべてアウトソーシングする。
生産は香港の家電メーカー、トニックに依託してる。同社の凌少文会長は鈴木とはケンウッド時代からの旧知の仲で、デバイスタイルの大株主である。トニック側にも、鈴木の商品を請け負うことで、買収したばかりの中国家電工場の活動率を上げられるメリットがあった。
商品の納入や代金回収、アフターサービスも専門企業に任せている。
設立当初、鈴木を含め3人だった社員は、今も10人。「同じ製品を人も工場も自前の大手メーカーが作れば3割りは高い」
「最も効率的な家電メーカーをゼロからつくるとき、どの機能を最低限残せばよいか考えた。それが商品企画と営業だった。この2つを自前で手掛けメーカーとしての独自性を確保した」
鈴木はケンウッドの黄金時代の立役者として知られている。
入社4年目、営業から商品企画に転じて手がけたミニコンポ「ロキシー」のモデルチェンジが、ヒットメーカーへの第一歩だった。
手法すら確立されていなかったオーディオ分野での消費者調査を、試行錯誤しながら実施。「なけなしのお金でコンポを買う若者こそ、安物で失敗したくないと考えている」との結論を得た。
銀色で軽い印象だった外観を黒で統一。高級感を出し、再生機能も単品コンポ並みに引き上げた。価格は30万円台と従来品の3倍となったが「飛ぶように売れた」。
7、8位に低迷、後発の悲哀をかみしめていたロキシーは、悲願もシェア1位を取得。次世代の「アローラ」や「アビーノ」も首位の座を守った。
だが、気がつけばオーディオの企画だけで20年を過ごしていた。折しも市場は、低価格競争の泥沼にはまり停滞気味。「オーディオばかり長くやり過ぎた。他の分野も手掛けてみたい」。
ヒットメーカーとしての自信と、50歳の節目が目前だったことにも背中を押され独立を決意した。
自信はあったものの、新会社の知名度はゼロ。
「商品力と割安感で消費者にアピールすることが重要」と考え、そのための方策を追求した結果が、特異なビジネスモデルにつながった。
一方、ヒット商品を生み出すには機能や外観、価格、さらに宣伝も含めたビジネス全体をデザインすることが欠かせないことをケンウッド時代に嫌というほど経験している。鈴木は担当の垣根を超え、常に全体の構想を描きながら行動したが、今は、こうした考え方をさらに徹底している。
参入分野や商品コンセプト、機能、価格、デザインといった大事な要素を決める際には、必ず営業や宣伝担当も含めた社員全員が集まって議論する。この積み重ねからバランスの取れた商品が生まれるのだという。
現在、議論のそ上に乗っている商品案は20件強。これまでエスプレッソマシンとコーヒーメーカー、ワインセラー、トースターを世に送り出したが、「まだまだほかにも作りたいものはある」。
今年も4、5件の商品化を目指し、製品販売額10億円突破を見込む。
シェア1位狙い計算ち密
鈴木の手掛ける商品には、2つの共通点がある。1つは、どれも自分が以前から欲しいと考えていた商品であること。「ニーズがあるわけだし、消費者の視点に立った企画が立てやすい」ためだ。
例えば2003年7月に発売したワインセラー。長期熟成に向く本格タイプは数種類販売されていたが、10本以上入る大型品ばかりで、安くても10万円前後。試しに手を出せるような代物ではない。旅行中に買ったワインを自分で熟成させたいが、家に置ける適当なものがないという不満がスタートだった。
6本入りの「WA-6」は、従来の冷蔵庫っぽい印象とかけ離れたデザイン。寒冷地では加熱もできる本格機能を備え、価格は既存品の半分以下。「ワインをもっと好きになったら買い足せるように」と、最大6台まで数珠つなぎにして並べられるようにした。
1本入りの「WA-1」は、子供の生まれた年のワインなど「特別な1本」を何年も熟成するための機種。
窓からラベルが見えるようデザインした。鈴木自身が「ラベルを気に入ってワインを買うことが多いから」という。
もともとワインセラーは、大手量販店が冷蔵庫売り場で申し訳程度に1〜2機種を陳列する程度の商品。
シリーズ発売後「同分野の販売台数は十倍以上に増えた」(某電気販売店)という。

ただ、道楽ではない。シェア1位を取れる市場にしか参入しないというち密な計算も働く。「それぞれの商品ブランドがトップになれば、そのイメージが波及し、会社全体のブランド力を押し上げる。逆に企業としてのブランド力がゼロに近い今、市場で下位に低迷すればたちまち安かろう悪かろうの印象を持たれかねない」
規模は小さくても、モノにこだわる層の多い市場でトップイメージを維持できれば、あのデバイスタイルが、と次につながるというわけだ。
「辛抱強く本格機能の商品を安く提供し続け、デバイスタイルが日本人の生活を変えたと言わしめたい」。鈴木はこんな思いを胸に秘める。
日本経済新聞2004年5月1日(日経MJ)
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